着物の奇跡のお話。

着物を染めていて思うのですが、

必ず、良い着物というものは、その持ち主と惹かれ合い、持ち主の人生に干渉する。ということです。

 

多かれ少なかれ、お着物のお誂えには、ご縁や物語があるものです。

 

そんな中でも、着物を染めていて起こった、奇跡のような出逢いを書き記すことにしましょう。

 

 

 

一話「お着物を初めて誂える。ある男性のお話。」

 

お着物にそれまでご縁のなかった方でした。

ご友人と共に、工房体験でいらしてくださり、その作業を拝見すると、練習に、1時間半もかけられたのです。

その出来は、完璧と言っても良いものでした。

練習で頑張りすぎて、本番は力尽きたと仰っていましたが、本番も、やはり上手で。

そう、彼は、車の整備工なのです。

その仕事ぶりを見て、「この人になら、安心して車を預けられるな。」なんて、思いました。

 

それから、お着物好きのご友人のおススメもあり、お着物を誂えられることになったのですが、腕も長いし、せっかくの工房でのご縁なので、デザインから起こすことにしました。

ちなみに、工房体験で染めたこの方の風は、こんな風です。

ですが、この扇子は、初対面で話が盛り上がり、たくさん笑った彼の風。

もしかしたら、もう少し落ち着いた方だということも、感じていました。

 

車の整備工ということもあり、紋にはギアのような遊び紋をデザインする、

ということも決まりましたが、全体のデザインは、その方を映えさすために、深く考えなければなりません。とはいえ、頭で考えたものは上手くいくものではありません。

この時のデザインは、割とすぐに出てきました。

体に風彩染をふんだんに染め上げつつ、男物として甘くならない。

そして、爽やかでありつつも、静の雰囲気のある。たとえ同じ図案でも、色目の強さだけでも、まったく変わるわけですから、実は、その人のデザインで創る、というのは、数々の関門を乗り越える奇跡のようなもの。

その最大の関門は、たとえお似合いのものが作れたとしても、「気に入ってもらえるか?」ということなのです。当たり前ですけどね。

 

出来上がってお見せしたのは数か月後。

お見せした時の反応は、忘れられません。

 

そして、批評には厳しいという彼が、いつになくの笑顔とテンションで語ってくださいました。

「自分は、車の整備工になりましたけど、ほんとになりたかったのは、飛行機の整備工でした。飛行機に関わりたいって思わされた飛行機は、ロシアの戦闘機なんですが、、」と言われ、見せて頂いた飛行機の写真はこちら。

そして僕が染めたものはこちら。

勿論、そんなエピソードがあることも知りませんし、飛行機も見るのは初めてでした。

こんなことがあるのかと。

その方のことを考えて染めた時、そこに、テレパシーのような、不思議な奇跡が起こるのです。

 

この日、喜んで、人生初めてのお着物をお受け取り下さいました。

こんなお話が、たくさんあるのです。

また、書いてみますね。

 

 



 

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