着物作家という言葉と、業界の仕組み。

こんにちは☆固いタイトルですね~。結構あけっぴろげなことを書いてるのですが、本当のことを世間の方に知って頂くことは、相撲界みたいなもので大切なことじゃないかと思うので、書いてみます。

まずはお着物に、「作家もの」というジャンルがあることを、業界の仕組みと共にお伝えしようと思います。

作家ものとは

「自由な独創性に溢れていたり、いわゆる知られた伝統柄以外のものを創っている」わけです。その力量には差があり、センスも様々。資格があるわけではないという意味では小説家や他のアーティストと同じです。

良いものになれば、通常呉服屋様にあるものよりも、上質な生地、手間をかけた作り方、個性ある作品として、人と被らない着姿が手に入ります。

逆に悪いものになれば、変に個性的だったりもします(笑)それは好き好きとして、問屋街で作られたものを寄せ集めて持ち寄る「セレクト作家」もいたり。それはまた後程書きます。

着物業界の構図はざっくりと、こんな感じです☆

お着物を販売するところに僕ら作家は招かれて展示即売会をすることもあります。そこで人気が無ければ明日にも野垂れ死ぬかもしれない、シビアな世界です。日本全国参ります。その時は、これまでは問屋さんにご紹介されて参りましたが、今は、直接小売店に行くことも随分多くなりました。

作家=作っている人??

「着物作家」というと、お着物を実際創っている人のイメージでしょうか??

実はこの業界では、たいてい違うんです!!

◯「悉皆屋」

各工程の職人にお願いして染めてもらい、出来上がった反物を自分の作品とする「悉皆屋」というプロデューサーの人。これは、分業制の京都に伝統的にある位置づけですね。職人をまとめるセンスが無いと出来ない仕事。世界観をきちんとするという意味では作家らしいと言えると思います。

◯「セレクト作家」

問屋さんや、つぶし屋さんと言われる、とにかく出来上がりの反物を持っている複数社、あるいは一社から着物をセレクトして自分の作品として持ち歩く「セレクト作家」もいます。全く絵も描けない人間が「先生」とか呼ばれているのを見るのも今では慣れましたが(笑)この人たちの持って来てる着物が売れれば、作っている人に、少しくらいは実入りがあるならこの人たちも必要な存在だよなあ、、とも思います。

◯「営業作家」

自社の工房を持ちつつ、自身は営業だけに徹して、小売り店に出入りする「営業作家」。この人が営業に徹しているから社員が生活できるわけで、実際は着物作家ではないと思いますが、作品性が高いことはあります。また、人気作家は各問屋や呉服屋さんの取り合いになり、予定が詰まるもの。3年先まではぼ毎週出張依頼くる、なんてことも可能です。余計にものづくりは出来ませんが、それこそ遂行する責務と言えます。

という、実際作ってない人が世にいう「着物作家」の9割以上を占めています。

「プロデューサーです」とか名乗る人も稀にいるので、そういう人は好感度大です(笑)まあ、ちゃんと呼び方分けろよって、それだけの話なんですけどね。呉服愛好家の方が会いたいのは、実際染めてる人なんじゃないかな、と思ったりもしますから、そのあたり曖昧なんでしょうね。

でも、実際やっぱり、作れて喋れる人って少ないんです。呉服屋さんに、本当に作っている口下手の人が来て、実演して、それで大人気になるかと言うと、お客様の注目の的にはなるのですが、お買い上げに至るのは少ないことが多いようです。そんなとき、その職人さんは「あの先生は喋ってくれないからな~」なんて言われたり。いや、そりゃあ大抵職人は口下手なんだけどって話ですよね(笑)

昔は今より着物人口が20倍ほどとのことですから、叔母や祖父も、口下手ですが、百貨店の実演して人だかりがすごくて、作品も良く売れた、と言います。そう思えば、悲しい話ですよね。たとえ着物人口が減ったとしても、いらしてくださるのは着物好きなお客様なわけですから、同じことだと思います。

そういうのがあるべき姿だと思いますが。。というか、そうなってほしい。それが出来ないから、営業作家が多いんです。なるべくして出来上がった構図です。そうしなきゃ、職人さんたちの作品、動かないわけです。営業作家も、この小さくなっていく業界に必要な人なんだなと、今は思えるようになりました。このままで良いとも思いませんけど。

 

では一真工房はどんな「着物作家」か

僕は着物を染めることも、小売店への出張も、両方しています。着物を染める時は、生地のセレクトから図案制作も染めも、全部します。出張先では必ずリピートして何度もお呼び頂きます。どちらも当然真剣です。

そのスタイルには理由があります。

14年ほど前でしょうか。母の展示会に手伝いで行ったことがありました。当時は絵や漫画は描くものの、着物はほぼ作っていなくて、僕の作品はゼロの会場でした。その時あるお客様とすごく仲良くなって、だいぶ年上のマダムでしたが、「生まれ変わったらあなたと一緒になるわマイハズバンド!!」なんて冗談を交わしつつ、「私、このお兄さんの着物買うわ!!」と仰ってくださった方がいらしたんです。でも、その中には一つもないわけです。店員さんには口裏合わせを頼まれ、断れませんでした。嘘ついたわけですよね。そこから僕はほぼ喋れなかったので、もしかしたらお客様解られていた気もします。けど、お買い上げくださり、お別れの時、笑顔で帰って行かれたことは覚えています。そんな恥ずかしい記憶です。

僕は、僕が思う着物作家でもありますが、皆さんが思い描くはずの「着物作家」でいたいと思うのです。今度こそ、自分の作品で感動させたい、と思いました。

自分で創ったものをほめられる、お持ちいただける喜びはそりゃあ誰だってあると思いますが、「嘘をつきたくない」という気持ちも大きい気がします。

ただ、そのスタイルが出来るとしても、作品数は限られます。もちろん、僕にご依頼くださった方の着物は図案も染めも全て僕が染めています。ただ、小売り店展示会に行くときは最低100反、多くて300反は持って行きますし、自分一人では全ての作品は到底創れません。家族はじめ、うちの職人さんや、長い付き合いの職人さん方のおかげです。ただ、創れる腕は持たなくては、と思うのです。

パリの三ツ星レストランの多くのシェフは、全体の監督と最後の盛り付けをして、毎日何百という料理を創るといいます。

画家のレンブラントの工房も大所帯であったことは有名ですし、他にもそんな画家は大勢います。

着物が年に数枚出れば生活できる、という収入が無い限り、一人きりでするのは難しいでしょう。大体、皆さまお買い上げになられた着物の10分の1くらいの金額が職人達の手に渡るのかな、という目安が良いかと思います。これでは跡継ぎ不足も当然です。うちも、若い子がほぼいないから危ない。これは、他の伝統工芸でも同じことのようですね。

とにかく、しっかりしなくては、と思います。

一真工房は、作家と職人一体の工房です。

これからもそれを続けるには、やはり、たゆまぬ精進と、運と、小売店や問屋という業界の方々、何よりファンの皆様のお力あってこそです。

では、うちの作品性や着姿とは、どのようなことを大切にしているか。

かなりマニアックなお話ですが、こちらからどうぞ

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