朝日新聞デジタル掲載(26日夕刊ノーカット掲載予定)

東京から朝日新聞の記者様がいらしてくださり、取材してくださいました☆

デジタル版はこちらから☆一か月無料登録も可能だそうです☆

26日の全国版の夕刊には、さらに深い内容になるそうです。お楽しみに☆

以下は、デジタル版の内容です☆

漫画家の経験生かして着物づくり ストーリー性ある図案で「風彩染」

吉川真布
 
 
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「風彩染」というぼかしの技法を用いる着物作家の加藤洋平さん=2022年9月2日、京都市中京区、筋野健太撮影
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凄腕しごとにん

 着物作家の加藤洋平さん(40)は漫画家の経験を生かした作品で知られています。顧客からの依頼に応じてオーダーメイドでつくる「ストーリー性のある図案」の着物は年間約20枚。技法や作品に込められた思いをたどりました。

かとう・ようへい 1981年生まれ。同志社大卒業後は漫画家として活動し、2007年に「週刊少年ジャンプ」の漫画賞で最終候補に残り、賞金を獲得。20代半ばで着物作家に転じた。

 花嫁衣装の色打ち掛けは、鮮やかな色合いと縁起のよい柄が特徴だ。

 新婦の着姿をイメージしながらラフ画を描き、図案や色を決める。生地に鉛筆や墨で線を引き、染める。緋色(ひいろ)や、深い緑の常磐色など、約60色に彩られた鮮やかな反物に、黄色の染料をつけた筆をのせていく。大きな染めから、細かい柄の染めまで様々な工程を担う。

 得意とするのは、ぬれた生地に染料を置いてぼかし、風合いを出していく「ぬれ描き」の技法だ。風をイメージして「風彩染」と名付けている。

 染めの作業では、右手に持った2本の刷毛(はけ)を使い分ける。イタチの毛でできた刷毛を鉛筆のように握って染料でさっと色をつけたら、薬指と小指、手のひらの間に挟んだ鹿の毛の刷毛で、ぼかしの味わいをすぐに広げていく。

 中断すると、乾き具合で色合いに違いが出てしまうから、無心で反物と向き合う。食事に立つこともない。「刷毛を一瞬脇に置き、その手でハンバーガーを一口食べる。またすぐ刷毛を持って染めるのです」

 休みなしの作業は1日13時間。これを5日間ほど続け、幅40センチほど、長さ15メートルほどの正絹の生地を染め上げる。

 明治時代から続く京都市の「一真工房」の家に4代目として生まれた。両親や職人たちが間近で着物を染める環境だったが、着物作家になろうとは思っていなかった。

 大学卒業後には、漫画家の道を歩み、週刊少年ジャンプでも賞金を得た。だが、作品のネタ集めのために訪れた両親の着物の催事場で転機が訪れる。

 着物の柄や技法を必死に説明しているうちに、「あなたの着物がほしい」とお客さんから頼まれたのだ。

 戸惑いもあったが、「自分の着物を催事に出したい」という思いがまさり、着物作家の道を歩み始めた。

 顧客からの依頼は十人十色。「自分の名前にちなんだ着物を」「猫が大好き」といった希望にもこたえる。「夢」をかなえるには、技術も感性も求められる。ストーリー性のある図案を考案したり、客のペットを表情豊かに描いたりできる持ち味が知られるようになった。デザインし、染めてゆく着物は年間約40枚。うち半数の20枚ほどに漫画家の経験が生かされているという。

 コロナ禍で外出の機会が減り、新たな顧客と出会う催事も減ったが、工房で反物と向き合う時間は増えた。「伝統を守りつつも、これまでにないものを染めたい」。その思いで、「流水」や「七宝」といった古典柄も大切にしながら、「雨が傘に当たってはじけ、縁起ものに変わっていく」といった物語の表現にも挑んだ。「着物は、感動の詰まったドラマなんです」

 「大好きなカワウソの柄が入った着物を作ってください」など、これまでの常識とは異なる注文も届くようになった。着るのは楽しい、という感覚の広がりに手応えを感じている。

 「漫画は、僕がストーリーを考える。着物は、着る人がストーリーをつくる。着てもらってからが、物語の始まりです」(吉川真布)

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