サルビア、と言うお花はご存知だろうか。和名ではヒゴロモソウというらしく、白から紫まであるそうだが、緋衣草の和名の通り、赤いサルビアが一般的。着物の柄としては極めて珍しい。
とある呉服店、20歳過ぎくらいのお客様。
はじめましてのご挨拶から、色々お話して、さて何をコーディネートしてみようと思っていた所、ふと手を伸ばされた反物。
一真工房のグレーはお顔写りの良いのが流儀。だからお若い方でもお似合いにはなるけど、
「おっ、意外とすっきり渋好みやな」と思っていたわけで。
すると、小さなお花が現れる。全部手描きの繊細な青いお花たち。「これ、何のお花ですか?」
「これはサルビアですね」僕は答える。
すると、固まったように目を丸くして驚く。
一体何があったのかと問うと、彼女が大好きな歌手は式根島出身。その島のお花をとても大切にされていて、しかもファンクラブの人に向けての限定の歌があるらしく、その曲名が、
「青いサルビア」
だった。
数十反あるお着物からたった一反色が気に入って取りだしたお着物が、そんな柄だった。
他に候補を出す必要はなかった。彼女は仮着付をして、即断でお嫁入りさせてくれた。
タイミングの出逢いがたくさんあったりするが、これも驚いた。奇跡的と言えると思う。
余談だけど、働き始めて4年。されど21才。本当に好きなものを手に入れる姿は尊敬すらする。
僕も大好きだったこの着物。本当に大切にしてくれることでしょう。